萩尾望都『トーマの心臓』-HagioMoto-
小学館プチコミックス萩尾望都作品集(第一期)11,12(全2)1978年ほか |
ドイツのシュロッターベッツ・ギムナジウムに一人の少年が転入してくる。彼の名はエーリク・フリューリンク。委員長ユリスモールは、彼の姿に衝撃を受ける。彼は何と、死んだばかりの下級生トーマ・ヴェルナーにそっくりだった。 事故死と思われたトーマの死は実は自殺であることを、自分宛ての遺書で知ったユリスモール。 「これがぼくの愛。これがぼくの心臓の音。きみにはわかっているはず」 わからない、と言ってユーリ(ユリスモール)は手紙を引き裂く。
彼は忌々しい過去を隠していた。自分はもう愛することも愛されることも許されないと思い、エーリクにトーマの影を重ねて、殺したいという衝動にもかられる。 物静かでしっかりしていて、善意溢れる委員長ユリスモール、かわいらしい容姿だがけんかっ早く、威勢のいいエーリク、不良っぽいが大人びて、面倒見の良いオスカー。個性豊かな少年達は、皆それぞれに心に傷を抱えながら、ぶつかり合い、支えあい、その繊細な美しい時代を共有する。 トーマの、そしてエーリクの背に翼を見たユーリ。そしてその彼の背にも、エーリクは翼を見ていた。天国へ至る狭き門をくぐる為の翼を。
愛するということ、許すということは、どういうことなのか。
そしてトーマの死をめぐって彼らが見つけたものは何だったのか。
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