新井理恵『脳髄ジャングル』-Arai Rie- フラワーコミックス(全2巻1994,96年・小学館） ある日黒魔術により安眠枕を召喚した真理（まさみち）のもとに現れたのは、なんとも目付きの悪い枕。魔術の失敗で、現れたのは人に悪夢を見せる「まくらん」だった！ ぞっとする出だしだが、どうもふざけた設定で、それでいてなかなかどうしていちいち真理を突いているではないか。 短編で、1巻目はまくらんを巡る、真理の学校の友達などの話になっている。2巻目のファンタジー世界（人間の心の魔を表象する世界）の話もおもしろい。 この新井理恵という漫画家、絵はきれいだが結構下品だし、おすすめするのもどうかと思い悩んでいたが、それでもやはりここに紹介する気になってしまうほど、おもしろい。特に学生時代の作者の経験に基づく、社会（学校社会）へのシニカルな観察が見事。言葉は悪く、正直な分怖いが、まっとうな感じ方だと思わせる所が有る。その醜い人間の一員としての自分さえ意識し、けなし、こき下ろしつつ、それでも作者はそういった人間の醜さが実は結構気に入ってるんじゃないか、という気がしてくるところが、とても好きだ。この「脳髄ジャングル」では特にそういう風に感じられる。 ４コマ漫画の「×（ペケ）」（全7・小学館フラワーコミックスペシャル）もおもしろい（が、強いてお薦めはしない）。新井理恵は半端にページに余裕が有るとくどくどした感じになる傾向があるようなので、むしろ4コマの方があっているのでは？と思うのは余計なお世話かな、やはり･･･。 戻る