川原泉『笑う大天使』-Kawahara Izumi-
(全3巻)白泉社花とゆめコミックス1987〜1989
私が初めて読んだ川原泉の作品は『笑う大天使』である。最初に数ページ読んだ印象は、正直言って「ストーリー展開が変」というものだった。だいたい、始まって2ページ目で作者がいきなり登場し、物語が始まる前に裏話を始めてしまうというセンスは一体何なのだ。そしてはっきりとしたイントロと本題との境がなく、でれでれとまとまりなく話が進行する。これを何と評したらいいか迷う所だが、迷いつつ、いつの間にかこの世界に巻き込まれていた。それだけ新鮮で、魅力があるということなのだろう。
聖ミカエル学園は、「マリア様、嫌な事はわたくしが喜んで」の学園標語で名高いT純心もびっくりの、名門お嬢様学校である。有名進学校からの転校生史緒、クラス委員でお姉様方のアイドル柚子、スポーツ万能で「聖ミカエルのオスカルさま」和音の3人は、異色の猫かぶりエセお嬢様としての親近感から団結する。
上品で人がよく、浮世離れしたお嬢様達の中で、クールに雄々しく生きる彼らの姿は、その存在自体が、あくせく生きる大人をおちょくり、権威の空しさを暴く批評家であると同時に、「お嬢様」に象徴される、乙女の純な心を守る、「作業服を着た労務者風の天使様」なのである。

1、2巻は続き物で、3巻は短編集になり、また変わった趣となる。和音と史緒がやや浮いている気がするが、個人的には「オペラ座の怪人」という話が好きだ。


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