高橋由佳利『過激なレディ』-TakahashiYukari-
集英社りぼんマスコットコミックス(前・後巻、全2)1984年

昭和初期、無声映画の時代は終わり、トーキー(有声映画)による新しい映画作りに人々は情熱を燃やした。
中でも注目されている新進若手映画監督、風月氏は「モダンガール殺人事件」のヒロインを一般公募する。
大女優田ノ倉真珠をもさしおいて抜擢されたのは、元華族のお嬢様、杜繭子。世間知らずで、家の借金を返済するための給金目当てで映画界に飛び込んだ繭子だが、思うように演技できず、風月監督にさんざん叱られ、しごかれる。
しかし監督は繭子の中に女優の資質を見出していた。繭子は風月を嫌うが、やがてその映画に対する情熱にひかれていく。持ち前の気の強さで風月監督や敵役の田ノ倉真珠と大喧嘩しながら、ファインダーの中で生き生きと輝き始める繭子。

あまり専門的な情報は詰め込まれておらず、ダイコンだった繭子がどのように「あのお嬢さんよくなりましたねえ」と言われるまでに至ったか、また、風月氏が繭子の何をどのように認めて抜擢したのか、といったあたりがよくわからないが、そこが「りぼん的」。ここではあまりそんなことは問題でないのだ。かっこいがつれない男、仕事上でも個人的にも手強いライバル、密かに主人公を慕う優しい美青年、といったおきまりのパターンの中で全てを勝ち取っていく繭子の姿は、安易だけれど少女の憧れを刺激する魅力がある。うますぎる話の展開も、そんな馬鹿なと思いつつ、高橋由佳利さんの手腕に負けてついつい許してしまう。
一昔前の高橋さんの、チャーミングでしゃれた感じの絵も素敵。繭子が振袖で踊るチャールストンと、田ノ倉真珠との大乱闘が見もの。モダンガール繭子の服装にも注目。

絶版になっていると思うが、古本屋で手に入ると思う。

初出 『りぼん』1984年


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