木原敏江「花伝ツァ」-Kihara Toshie-
花とゆめコミックス(全1・1985年白泉社)他
上月(こうづき)は一本気で情に厚い青年。花車(かしゃ)は旅の途中病に倒れていた彼を、誤解から拾って家へ連れ帰って介護した。美しい少年花車は、時々不気味なことを言ったり、血を滴らせて帰ってきたりするが、上月はやんちゃで人懐こい彼に惹かれ、やがて愛し合うようになる。
しかし上月には故郷に一族の危機という事態と、美しい許婚が待っていた。重陽の菊の節句までに必ず再び帰ってくると約束して、上月は花車の元を旅立って行くが・・・。
人間と鬼、男同士という結ばれがたい運命にある二人の、美しく悲しい物語。 短編。
もとは上田秋成『雨月物語』から取った題材らしいが、はかない美しさと残酷さが身に染みるような、木原敏江さんらしい色彩で彩られている。最後が泣ける。心に残る作品。

初出:『花とゆめ』1980年


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