森川久美『花の都(フィレンツェ)に捧げる』-Morikawa Kumi-
あすかコミックス(全1・1991年角川書店)他
15世紀、フィレンツェを支配する権力者ロレンツォ・デ・メディチは、ある日修道院の庭で不思議な厳しい目を持つ男と出会う。それはドミニコ会修道士サボナローラという、陰謀に汚れたメディチ家の支配を否定し、神による政治の実現を説く若者であった。メディチと敵対する危険人物であるにもかかわらず、ロレンツォはどこか彼に惹かれて、その布教活動を黙認していた。しかし・・・

どこか底に有る引力のようなもので引かれあいながらも、相容れない二人の生き方がとても悲しく、読んでいてじわっと寂しさが染み込んでくるかのようだ。短いが、歴史物として重過ぎず過不足無くまとまった美しい作品だと思う。

初出:『増刊ASUKA外国ロマンDX春の号』1991年


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