神坂智子『蒼のマハラジャ』-KousakaTomoko-
角川書店あすかコミックス(全10巻)1990年〜1993年
イギリスの支配下にあったインド、ラジャスターン藩王国のひとつジョドプールの王宮に、イギリス大使バーンズ一家がやってくる。お転婆な一人娘モイラは、お伽噺のような宮殿や砂漠の世界に大喜び。王子シルバとも喧嘩しながら仲良くなる。しかし時代は第二次世界大戦前夜。宮殿内にも不穏な空気が流れ出す。
イギリスの不当な支配と戦う為に、モイラはシルバらと共に立ち上がる。

あまりにも価値観の違うイギリスとインド、二つの国の狭間にある少女は、様々な衝突の末、民族や宗教、文化の差を乗り越えてお互いを尊敬し愛し合うことを知ってゆく。それがシルバやモイラの目指す新しい国づくりだった。

戦争のためシルバと離れ離れになたモイラは、ドイツ軍に追われマフィアに捕まるなど様々な冒険の末シルバのもとに帰り着く。しかしそこでも多くの困難が待ち構えていた。
どんな苦境も勇気と知恵で切り抜け、時に悩み打ち砕かれながら、明るく勇敢に戦うモイラの姿はとても素敵だ。
息をつく暇も無いモイラの大冒険、そして人と人との心のふれあいを、コメディを交えつつ感動的に描き出した作品。
モイラの王宮での美しいサリー姿にも注目。
多くの物を内包するインドに対する、作者の思い入れたっぷりの物語。


初出 ・・・『ASUKA』1990年3月号〜1993年6月号
戻る

inserted by FC2 system